Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2004.07.05
vol. 3
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
写真に興味のある人なら誰でも楽しめるメールマガジンです。
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こんにちは。
雷鳥社「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのオオネダです。
写真を撮ること、見ることが好きな人にお届けしているこのメールマガジン。
第一線で活躍する写真家のインタビュー、写真の撮り方のワンポイントレッスンという二つの柱でお届けしています。
先週、先々週と“楽園写真家・三好和義さん”に迫っていますが、今週も引き続き、三好さんの魅力をたっぷりお届けします。

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私が写真を撮るワケ
「楽園」の誕生と深化に迫る。写真家・三好和義インタビューVol.3
生まれ持った鋭い感性と、人並みならぬ好奇心と行動力で常に道を切り開いてきた三好和義さん。「私が写真を撮る理由(わけ)」第2回目までは、写真との出会い、三好さんのルーツについてうかがってきた。
第3回目では、三好さんのカメラマンになるための活動、そして徳島への思いを語っていただいた。
■ Profile ■
三好和義(みよしかずよし)
1958年徳島県生まれ。13歳で沖縄を訪ねて以来、写真の世界に入る。雑誌『BRUTUS』の取材カメラマンをきっかけに、大学在学中からプロとして活躍。1986年、27歳で写真集『RAKUEN』で木村伊兵衛賞を当時、最年少で受賞。タヒチ、モルディブ、サハラ、ヒマラヤ、南極など、世界各地で「楽園」をテーマに撮影を続けている。最近は、故郷吉野川を始め、富士山、屋久島など国内での撮影にも力を入れている。最新刊は、『巡る楽園〜四国八十八ヶ所から高野山へ〜』(小学館)。この作品により2004年7月、第4回「藤本四八写真文化賞」を受賞する。
オフィシャルHP
ぼくのふるさと
自ら生まれ育った徳島を河口とする吉野川の全流域を撮影し、日本人の誰もが心の中に持っている故郷の原型として一冊にまとめた写真集
小学館(1998/04)/4‚515円(税込み)

三好和義写真集『巡る楽園』四国八十八ヶ所から高野山へ
3年間に及ぶ取材による四国八十八ヶ所と高野山をまとめた写真集。多くの人々がそれぞれの思いを抱いて回る四国遍路を、本尊を含む300点近い作品で一気に巡る写真集
小学館(2003/12)/3‚150円(税込み)




「カメラ禁止令」解禁と同時にスタートした高校生活
三好家では基本的に両親が子供の行動に干渉するということはなく、カメラを買いたいという理由でアルバイトをすることにも特に反対はなかった。
しかし、高校受験という現実に向き合わなければならなくなると、さすがに「カメラ禁止令」が出た。

「受験までの半年くらいの間はカメラ機材一式をしまわれて、勉強に集中しなさいということだったんだけど、写真を撮れないとなると、もう頭の中はますます写真のことでいっぱいになっていたんだよね。それで高校受験が終わって『カメラ禁止令』が解禁になるまでの間は、親に内緒でそれまでに撮った写真をコンテストに応募していた。でも写真は撮れないから、もらった賞金でお金は貯まっていくでしょ。それで高校に入ったらすぐにそのお金で沖縄に行ったんだ。確かダイビングのライセンスもその時貯めたお金でとったと思うな」

高校に入学するころまでには、新聞に掲載されたり、コンテストに入選したりと、かなり前向きに写真活動に力を注いでいた。それで両親も認めてくれていたのか、入学祝いにと希望したニコノスのフルセット(接写レンズからストロボはなかったからフラッシュ)を買ってもらったそうだ。

その新しいカメラを持って三好さんは2回目の沖縄に飛び立った。
道は開けると確信していた。感心するほどの自信と“したたかさ”
「中学生で初めて沖縄に行った時は純粋に写真を撮ることを目的としていたんだけど、この2回目の沖縄の時にはカメラマンになるということをかなり意識していた。このころは、月例などで賞をとってもそれだけではカメラマンになれないと思っていたから、『どうしたらカメラマンになれるのか』ということをかなり具体的に計算していましたね。そのころにはすでに商売気が出ていたんでしょうね」と笑顔で話す三好さん。

しかしその内容を聞いてみると、高校1年生のその“したたかさ”には驚きを通り越して正直感心させられてしまうものがある。

高校に入学して最初の夏に沖縄に向かった。その時三好さんは同じ年の秋に写真展を開くことを決めていて、そのための写真展会場もすでにおさえていた。当時県展の審査員だった岩宮武二さんが徳島に来るのを知っていて、その審査会場の隣を審査の日に合わせておさえていたというのだ。

「岩宮さんに見てもらえばそこから道が開けると確信してたから。その時の写真展は岩宮さんに見てもらうためだけに開催したといってもいいかもしれないな」

そしてその“おもわく”通り岩宮さんは三好さんの写真展会場に足を運んでくれて、東京に戻るとさっそく杵島隆さんや出版社の方に三好さんの話をしてくれていたことを後に知ったという。

夏の沖縄行き、秋の写真展開催からその後の具体的なスケジュールまで、「プロカメラマンへの道」計画をノートに書いていたという三好さん。しかもそれらは現実となり、確実にカメラマンへの道を歩んでいったのだ。
引き伸ばし機はライカじゃないとダメなんだ
沖縄で撮った写真が二科展で入選して、新聞にも大きく取り上げられた。二科展では最初は小さいプリントで応募して、入選すると大きなサイズに引き伸ばすことになっているのだが、当然プリントは必ず自分の手でやらなければ気が済まなかった三好さん。

「当時はライカのカメラは持っていなかったんだけど、ライカの引き延ばし機を父親に買ってもらいました。二科展で大きく引き伸ばすプリント作業は自分でやならければいけないんだっていってね。しかもそれはライカの引き伸ばし機じゃないとダメなんだっていって買ってもらったの」

何でも自分の手でやって自分の目で確かめなければ気が済まない性格だったが、高校時代には撮影を手伝ってくれる友人が何人かいたという。彼らは他の高校の写真部の学生で、カメラ屋さんが経営するお好み焼き屋で知りあった仲間だった。その時の友人の中には、現在同じカメラマンとして活動している人もいるという。

高校生の時にすでに、同じ志を持った仲間が集まり、写真を通してお互いを高め合う。そういった環境が夢に向かう若者たちを育てていく上での大きな原動力となるのかもしれない。

徳島県出身のカメラマンとしては立木義浩さんを知らない人はいないだろう。三好さんに、徳島という土壌と写真との関わりについて伺ってみた。

「最近僕が四国八十八ヶ所に取り組んだのも、出身地徳島に対する何か特別な思い入れがあったといっていいかもしれない。立木さんについてももちろん意識していて、学生時代に立木さんに会いに行ったこともありますよ。僕自身に関しては、戦国武将の三好長慶の血が流れているかもしれないなんていう話があるみたい。だからもしかしたら、僕自身の美意識の中には、風流を好み、唄や茶を好んだという三好長慶の美意識が流れているのかもしれないよね」

ひとつの説として徳島県は、日本で初めて写真が広がった場所という話があるという。

「昔徳島の港は外来の薬品が輸入されて、外来船の行き交いが神戸や堺よりも盛んだったという話がある。写真の現像、プリントというのは化学反応だから、薬品の発達と関係しているでしょ。そんなこともあって徳島では写真が栄えたということを聞いたことがあるよ。調べたわけではないから本当かどうかは分からないけどね。でも皮肉なことに、その薬品の輸入によって徳島の伝統的な藍染が衰えていってしまったのが残念だけど」
Vol4(7/12配信)に続く

写真


柳谷杞一郎の写真上達のための100のルール
こんにちは。
柳谷杞一郎です。
「Photo365MAGAZINE」の読者のために、写真上達のためのヒントを毎回少しずつご紹介しています。
まずスタートから18回は、『花写真〜上手になるための18のルール』(雷鳥社)という本で一度書いていたことをおさらいしていきます(Photo365MAGAZINE版オリジナル原稿に手直しした部分もあります)。
今回はその3回目です。
■ Profile ■
柳谷杞一郎(やなぎたにきいちろう)
写真の学校/東京写真学園主宰。
1957年広島県生まれ。広告・出版物の制作ディレクターを経て、88年エスクァイア日本版の月刊化に際し、編集者として参加。90年副編集長。91年にカメラマンに転身。“大人の感性”と“少年の温もり”の混在する写真家として注目を集める。写真集に『Rapa Nui』『X』、著書に「写真でわかる<謎への旅>」シリーズの『イースター島』『マチュピチュ』などがある。
Rule3 アングルを考える

 立ったままじゃなく、
 たまにはしゃがんでみる。
 できれば寝ころぶ。
 カメラの位置で花の表情はまったく
 違って見えてくる。


被写体に思わず二歩、三歩と近づけるようになったら第一関門通過したと前述した。それから少し引いてみる、とも書いた。

次の段階はカメラ位置(アングル)を工夫することである。

写真をうまく撮りたいと思っていない人は、いつも同じ目線である。その花の一番の表情は本当に身長158センチあるいは172センチのあなたの目線からとらえるのがベストなんだろうか。あと5センチ高いところから、あと20センチ低いところから撮ってみたらどうなるだろうか。

あらゆる高さ、あらゆる角度からファインダーをのぞいてみる。ベストアングルが、意外なポイントで見つかるはずだ。

花を撮るならまず、「寝ころんでみる」、当たり前といえば当たり前のテクニックである。 


-Kiichiro’s Voice-

僕は、人様より余計によく地面に寝ころぶらしい。簡単なスマッシュを失敗してテニスコートにぶっ倒れるのはもちろんのこと、数学の赤点に驚いて椅子からころげ落ちる、銀行残高を見てヘナヘナとくずれ落ちる、などは日常茶飯事である。どうも寝ころぶのが好きなようだ。

寝ころぶと、空が見える。まったく、違った視点で世の中を見ることになる。なんだか、ダメな自分を「寝ころぶ」だけでリセットできる気分になるのだ。

写真を撮る時に、「今までにない視点を発見する」というのは、カメラマンにとって、いわば当然のこと。「寝ころぶ」から始めると、結構気持ちがいい。ただし、ミニスカートの女性がそばにいないか、気をつけよう! いい写真を撮りたいとうアナタの純粋な気持ちを、まわりのみんなが信じてくれるとは限らないのだから・・・。
花写真〜上手になるための18のルール〜/監修・写真の学校/東京写真学園
写真を上手に撮るために心掛けるべきことは、たった18のルール。まだカメラを持っていない人から中級者まで、読んで楽しい一眼レフカメラ入門の書。
雷鳥社(2002/03)/1‚155円(税込み)




編 集 後 記
中学生の時に将来を見通してスケジュールを立てたことがあったかな? と振り返ってしまった人も多いのではないでしょうか。小学生や中学生のころ心に思い描いていたことって、意外と今の自分のやりたい方向性を示してくれたりもしますよね。
さて、カメラマンインタビューの2弾が決定しました。今回もかなりの大御所です!読者の皆さんも「この人のインタビューを聞いてみたい!」などリクエストがありましたら、ぜひお知らせ下さい。(Hanaoka Mariko)
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