|
■ Profile ■
柳谷杞一郎(やなぎたにきいちろう) 写真の学校/東京写真学園主宰。 1957年広島県生まれ。広告・出版物の制作ディレクターを経て、88年エスクァイア日本版の月刊化に際し、編集者として参加。90年副編集長。91年にカメラマンに転身。“大人の感性”と“少年の温もり”の混在する写真家として注目を集める。写真集に『Rapa Nui』『X』、著書に「写真でわかる<謎への旅>」シリーズの『イースター島』『マチュピチュ』などがある。
|
|
rule7 絞りで表現する
絞りは、まず「開放」にする。 続いて「絞り込む」。 極端にいえばこのふたつだけでいい。 ピントの合うところと 合わないところがある。 これこそ写真表現の一番の面白さなのだ。
カメラは人間の目と違ってひどく不器用である。常に見えているものすべてにピントを合わせるとうことができない。逆にいえばピントが合わない部分があるからこそ、写真はアーティスティックな表現が可能なのである。
某著名カメラマンも、基本的には「開放」か「絞り込む」かのどちらかでしか写真を撮らない、とおっしゃっていた。
開放での写真の魅力はボケの美しさである。一度この魅力にとりつかれると、しばらくここから離れることができなくなる。ある部分にだけピントが合い、残りの部分はボケてしまう。人間の目では見ることのできない世界、写真ならではの世界である。
絞り込む写真の魅力は潔さであろうか。画面のすみずみにまでピントの合っている力強さには心ひかれるものがある。
入門者の絞り選択はまず、この「開放」か「絞り込む」からスタートすればよい。写真の面白さが見えてくるはずだ。
-Kiichiro’s Voice-
誤解をおそれずにいえば、写真という表現方法のポイントは、「ボケる」「ボケない」の組み合わせの妙である。
人間の目はあまりにも優秀で、なにを見てもほぼ「ボケる」ということがない。すごく近くから、とっても遠くまで、ものの見事にピントが合ってしまうのだ。しかしながら、カメラは、不器用な機械だから、それができない。あるところにピントを合わせると、どこかにピントの合わないところが出てくる。すべてにピントを合わせようとして、魚眼レンズを使うと画面の周辺がゆがんでしまう。
とにもかくにも、写真はピントの合うところと合わないところがあるから面白いのである。極端にいえば、写真とはどこからどこまでピントを合わせて、どこからどこまでぼかすかを考えるアートだともいえる。
というわけで、写真を始めてしばらくのうちは「開放」と「絞り込む(最小絞り)」のふたつにひとつを選べばいいのだ。少し写真がわかってくれば開放より1段絞り込む、最小絞りよりも1段開いた方がいいと自然と考えるようになるものだ。
|
|
|
花写真〜上手になるための18のルール〜/監修・写真の学校/東京写真学園 写真を上手に撮るために心掛けるべきことは、たった18のルール。まだカメラを持っていない人から中級者まで、読んで楽しい一眼レフカメラ入門の書。 雷鳥社(2002/03)/1‚155円(税込み)
|
|