声優になる!マガジン
2006.01.25  vol. 69
声優になりたい人、業界に興味のある人のためのメールマガジンです。
声優のインタビューと声優に必要なトレーニングや知識をレッスンします。
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こんにちは。雷鳥社「声優になる!マガジン」エディターのイタガキです。「声優さんになりた〜い!」と思っている人たちや、「アニメが大好き☆」という人たちに役立つ情報が満載のメルマガをみなさんにお届けいたします。今週は島本須美さんのインタビュー最終回です。みなさんへの貴重なメッセージもありますので、どうぞお楽しみに!!
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私が声優になったワケ
いつでも楽しく、ハートを入れた演技をし続けたい。島本須美インタビューVol.5
大学を卒業、そして青年座へ。舞台女優として着々とキャリアを積んでいく島本さんに、また別の引き出しが開けられました。それが声優の仕事です。舞台女優と声優の違い、宮崎駿監督の作品への出演した時のエピソードなど今週も盛りだくさんでお届けします。最終回の今週はみなさんに向けてアドバイスもありますので、どうぞお楽しみに!!
■ Profile ■
島本須美(しまもとすみ)
高知県出身。桐朋学園芸術短期大学卒業。劇団青年座に入団。その後女優として様々な舞台などに立ちながら、声優としての活動もはじめる。日本を代表するアニメ映画・宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』ナウシカ役、『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリス姫役はじめ、TVアニメでも『めぞん一刻』音無響子役、『小公女セーラ』セーラ・クルー役。外国映画の吹き替えでは『スターウォーズ』のテレビ放送のレイア姫役など誰もが知る数々の名作に多数出演。現在はフリーで、女優・声優と様々な分野で活躍中。






声優・初仕事がレギュラー
――― 島本さんが声優としての仕事を始められたきっかけは?

青年座に在籍している間に声の仕事をされている先輩に遊びに来ないかと誘われ、現場へ。そこで一声出してみないかと言われ声を出してみたら、今度オーディションあるから受けてみる?というような流れで…。その声優としての初仕事が「ザ・ウルトラマン」というアニメでした。初めての1年間のレギュラーのお仕事です。

今ではありえないような話ですが、当時は収録日を絶対動かすことがなかったので、旅公演のある舞台公演ができなくなってしまいました。当時の私は舞台に出たかったので、それ以降アニメのレギュラーの仕事はしませんと事務所には伝えましたね。

――― 初めてのアフレコの時はどうだったのですか?

それはもう大変(笑)。今はテレビモニターですが、昔はスクリーンでアフレコを行っていました。部屋が暗くなり、マイクのところだけ、台本が読める程度のスポットの明かりがついている状態。映画をみるように暗い中でのアフレコでした。聞こえてくる台詞は隣のマイクからなのに、自分が応えるのは目の前のマイク。そして、舞台的な発声だと声が通り過ぎてしまう。など、舞台畑の私にとってはその距離感の問題が一番大変でした。

あと、台本と画面を同時に見て、台詞をいうことにも苦労しました。今は予めビデオをいただけることもありますが、当時は現場で一度見るだけ。スクリーンなので間違ったらすぐ止めて録り直すということもできなかったので、とりあえず最後まで収録。間違った部分は後からそこだけを録り直すという形でした。ですから失敗を引きずったりはできないんです(笑)。たとえ一言だけの台詞の場合なども、待っている間のプレッシャーがかなりありました。でも、幸いなことに、私は最初からレギュラーをいただけて、紅一点だったこともあり、優しい諸先輩方に可愛がっていただきました。
ずっとファンだった原作の主人公に!!
――― 宮崎駿監督の作品にご出演されるようになったのは、いつごろですか?

このウルトラマンのレギュラー中に宮崎駿監督の「ルパン三世カリオストロの城」に出演させていただいたのが最初です。劇場公開当時はさほどでもありませんでしたが、TV公開されると同時にアニメの人気が出て、ファンレターなどいただくことが一気に増えましたよ。

――― 宮崎駿監督作品「風の谷のナウシカ」へのご出演はオーディションだったのでしょうか?

はい、この作品もオーディションでした。実は、ナウシカのときは、風邪をひいていて声が出なかったんです。オーディション当日は、台本を渡されてここを読んでくださいという感じでしたね。当然絵もありませんでした。クシャナ役の榊原良子さんと2人だけでオーディションを受けましたが、他のオーディション日があったのか、誰が受けていたのかは全く知りませんでしたね。

以前ファンの方から「風の谷のナウシカ」がアニメ化されたら是非ナウシカをしてくださいと、原作を教えてもらって以来、ずっとファンで、原作を読み続けていました。この作品はずっとやりたいと思っていたんです。

――― 「風の谷のナウシカ」でナウシカ役の人気は絶大、みんなの憧れでした。ご出演後はいかがでしたか?

アニメーションを子供のものから大人同士で観にいけるようにしたのは、確実に宮崎監督作品からですよね。この作品出演以降、オーディションのオファーをいただく機会が増えました。私自身もアニメのレギュラーと舞台の両立が可能なことを知りましたのでTVアニメのレギュラーもお受けするようになりました。

――― 舞台と声優としての仕事の差というのはなんでしょうか?

舞台をしていた頃は無意識のうちに自分の身体を見せるということが前提での演技をしていました。声優としての仕事がメインになってからは、身体の動きそのものも台詞の中に込めてしまうということを無意識にやりだすようになったと思います。演じているのは私なのですが私じゃない私、キャラクターに導入していく部分がありますよね。自分が上手に言いたいと思うよりもキャラクターが素敵に台詞を言えるように、ハートをいれる作業を大切にしています。そういう意味では、姿を見せて演じる舞台とは全く感覚が違っていますね。発声なども舞台とは違います。これは映像などもそうなのですが、声優を始めた当初はその区別が出来なくて苦労しました。

「風の谷のナウシカ」の時は、オンエアを劇場で観て恥ずかしくて、終了と共に逃げるように帰ってきたのを覚えています(笑)。下手でしたね(笑)。でも経験の少ない私が一生懸命やっているその素人っぽさを宮崎監督は計算のない初々しさと捉えてくださったのかもしれませんね。
心を裸にすること、そして素直さが大事
――― 島本さんは後進への指導もされていますが、声優を目指す人たちをみてどう思われますか?

いろんな意味で自分の殻を破らずにいる人が圧倒的に多いなと感じています。何かを感じて演じるということは、自分自身の心を裸にしないとできない作業。正直な話をすると、演技経験がない人の方が教えやすいですよね。いろんなことを吸収できて、伸びる可能性がありますね。どこかでやってきている人というのは、へんなくせがついてしまっている場合が多くて、それを0に戻すことが大変なんです。でも経験者でもそうでなくても、素直な人というのが、伸びると思いますよ。

先天的に顔の骨格などで滑舌が苦手な人が実際にいます。ですが絶対にダメということはないと思います。活躍されている声優さんすべてが、必ずしも滑舌が得意な人ばかりではありません。滑舌は誰でも訓練であるレベルまでは修正が可能なのです。それを指摘されていながら治せないというのは単純に努力が足りないということです。

声優という仕事はとてもいい感性を持っていても、それを声で伝えられなければせっかくの感性も意味をもちません。正しい日本語をしゃべり、正しく台本を読むことが出来ないと表現することはできませんからね。

あと、少し学んできた人に多い話ですが、技術的なことにこだわりすぎていて表現するために必要な素直な心が隠されてしまっていることももったいないと思います。そして、「私はこんなに感情を込めて演じています。こんなに心を込めて演じています」という自分にだけ気持ちがいい芝居をする人も多いかな。演技は嘘ですが、自分にだけ気持ちのいい嘘と演技の嘘は違うことだと思いますよ。

演技をしているのがばれないぐらい自然な嘘が本当にいい芝居かもしれません。誰も芝居だと気付かないくらい自然な嘘を演技にしたいですよね。

――― 声優を目指している人に何かアドバイスをいただけないでしょうか?

まずきちんと勉強を頑張ってください。中学、高校卒程度の知識はあったほうが絶対にいいです。大学を出てからでも遅くはないと思いますよ。勉強だけでなく、友達との交流や部活動など学生生活を楽しんでおいて損はないと思います。もし、早く始めたいのなら地元の劇団に入って稽古したりという手段もあると思いますから。声優という仕事は、アニメーションだけでなく外画、ナレーション、DJなど多岐に渡っています。基礎的な知識を学び、色んな経験をしておかないとチャンスを逃がしてしまうことになるかもしれませんよ。

そして、素敵な人になること。これが一番声優になるのに必要なことだと思います。

島本さんもとても素敵な方でした。
貴重なお話ありがとうございました。
次回(2/1配信)のゲストもどうぞお楽しみに!!

演技


声優になるための練習問題
オーディションの待ち時間の使いかたは…?
声優ってどんな仕事? どうしたらなれるの? なるにはどんなトレーニングが必要なの? そんな疑問にお応えするべく、毎回少しずつですが声優になるために必要な知識やトレーニング方法を紹介していきます。東京・荻窪にある声優・俳優養成所「松濤アクターズギムナジウム」の監修・協力により刊行されている『はじめての声優トレーニング』『声優になるための練習問題』(雷鳥社)という本をもとに、声優の世界をひもといていきます。

東京・荻窪にある声優・俳優養成所松濤アクターズギムナジウム














基礎から始める声優トレーニングブック 雷鳥社/1‚575円(税込み)
●次の【1】〜【5】は、オーディションの待ち時間に関する文です。正しいものに○、誤っているものに×をつけましょう。

【1】最終確認のため、実技試験の台本を読む
【2】リラックスするために、携帯電話で友達と話している
【3】いろいろな情報を得られる場なので、ほかの受験者に積極的に話しかける
【4】ヘアスタイルやメイクを直しておく
【5】外に出て、軽く準備運動をしておく

[解答]
【1】○ 【2】× 【3】× 【4】○ 【5】×

[解説]
【2】緊張をほぐしたいのはわかりますが、携帯電話などで話し込むのはNG。真剣味を疑われてしまうことも。ムダ話よりも、やっておくべきことがいろいろあるはずです。
【3】【2】と同様に、基本的にムダ話はよくありません。しかも話しかけたほかの受験者に迷惑がかかってしまいます。待ち時間は静かに待ちましょう。
【5】原則として、待ち時間は指定された場所で過ごすこと。急に何かの都合で予定が変わっても、その場にいないと連絡が伝わらなくなってしまいます。

いくら面接の場でうまく振る舞っても、それ以外の態度があまりにひどければ、マイナス評価の一因になってしまうのです。いつ、どこで、誰に見られているかわからないということを心掛けて行動しましょう。
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編 集 後 記
島本須美さんのインタビューも今回で終わりです。後進を育てる島本さんの言葉はストレートに本質的な厳しさを持っていました。演技という「嘘」を本物にするためにどれだけの苦労や感性が必要かを話してくれた気がします。それは島本さんご自身が通ってきた過程の証でもあります。それを感じ努力し続けられたら、将来島本さんとお仕事を出来るようになるかもしれませんよ。(Hashimoto Takahiro)
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